進行した結腸直腸(大腸)癌(がん)患者に対する標準的な3剤併用治療に、4種類目の抗癌薬をさらに追加すると、状態が悪化することがオランダの研究で明らかにされ、米医学誌「New England Journal of Medicine」2月5日号に掲載された。
今回の研究は、直腸結腸癌が身体の他の部位にまで拡大した(転移)患者755人を対象としたもの。ベバシズマブ(商品名:アバスチン)、オキサリプラチン(Eloxatin、日本での商品名:エルプラット)、カペシタビン(ゼローダ)の標準的な3剤併用治療にセツキシマブ(アービタックス)を追加すると有益な効果が得られることが、動物実験のほか2件の小規模ヒト試験で認められたことから実施された。それぞれの薬剤は作用が異なり、カペシタビンとオキサリプラチンは癌細胞を直接死滅させるのに対し、ベバシズマブには細胞分裂を促進する血管内皮増殖因子を阻害する作用がある。
試験の結果、4剤併用治療を受けた患者の平均生存期間は9.4カ月であったのに対して、3剤治療群の生存期間は10.7カ月であった。また、4剤治療群では薬物有害反応(ADR)が高頻度でみられた。このような結果が出た理由は不明だが、「抗体間に生じる未知の攻撃性によると考えられる」と、報告を行ったオランダ、ラドバウドRadboud大学ナイメーヘンNijmegenメディカルセンター教授のCornelis J.A. Punt博士は述べている。動物実験で副作用が少なかったことも手がかりになり、実験動物で毒性が少ないということは、生物学的効果も少ないのだという。
この知見から得られる教訓は、癌だけでなく、エイズ、結核など他の疾患の新しい治療にも当てはまると、米ハーバード大学(ボストン)医学部教授のRobert J. Mayer博士はいう。作用の異なる薬剤を追加することは有益であるとの考えが定着しているが、細胞の構成成分間に混乱を生じる可能性もあり、副作用の重複がなくても総合的な作用が必ずしも有益であるとは限らないと同氏は指摘している。
生きた細胞は複雑な機械のようなものであり、癌治療に新たな薬剤を追加する場合、何が起こるかを予測するのは不可能であるという。「大規模な、多額の費用をかけた臨床試験を行う必要がある。簡単に実施できることではないが、これらの薬剤が利益をもたらすはずだという熱意と期待を持っている」とMayer氏は述べている。
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