インターネットやその他のメディアを利用して自分の癌(がん)について調べている患者は、最新治療を受ける比率の高いことが新しい研究で示された。これまでの研究では、癌患者の40%がインターネットで医療情報を得ているとされるが、その情報が治療選択に及ぼす影響度についてはこれまで不明だった。
医学誌「Cancer(癌)」オンライン版に2月23日掲載(印刷版は4月1日号掲載予定)された今回の研究では、米ダナ・ファーバーDana Farber癌研究所(ボストン)のStary Gray氏らが、「ペンシルベニア癌登録(PCR)」から大腸(結腸)癌患者633人のデータを収集。特にベバシズマブ(商品名:アバスチン)およびセツキシマブ(アービタックス)の2種類の薬剤(いずれも分子標的薬と呼ばれる新しいタイプの抗癌薬)の利用状況に着目して検討した。
その結果、メディアで大腸癌およびその治療法に関する情報を得ている患者は、そうでない患者に比べて、この最新治療を知っていた比率が2.8倍であったほか、実際にその治療を受けた比率は3.2倍であることが判明した。この関連は、米国食品医薬品局(FDA)が適応承認した進行癌、承認していない早期癌のいずれについても強く認められた。
しかし、患者から医師にその治療法を提案したのか、それとも医師が処方した治療について患者が調べたのかは不明であるとGray氏は付け加えている。医師の診察に備えてインターネットで情報を探す患者もいれば、癌に関するテレビ番組があると聞けば必ず見るという人、医師からパンフレットをもらう人、別の医師にセカンドオピニオンを求める人もいると同氏はいう。
メディアを利用して自分の疾患について調べる人は増加傾向にあり、この30年で医療において患者自身が担う役割が大きくなっているが、必ずしも信頼できる情報源ばかりではないとGray氏は注意を促している。同氏によれば、米国立癌研究所(NCI)や米国癌治療(臨床腫瘍)学会(ASCO)、米国癌協会(ACS)などのウェブサイトが優れており、癌以外の疾患については、米国立衛生研究所(NIH)のほか、米国心臓協会(AHA)など特定の疾患を扱う団体のウェブサイトを勧めるという。
ACSのLen Lichtenfeld博士は、この研究結果の背景には、情報の有無とはまた別の治療への障害、すなわち費用や医療保険という因子が関与しているのではないかと指摘している。このような最新治療は極めて高価であり、保険による補償が十分でなければ治療を受けることは難しい。
例えば、アービタックスは月1万7,000ドル(約170万円)かかり、メディケア(米国の高齢者医療保険)加入者では、患者個人の負担が月3,400ドル(約34万円)、年間では4万ドル(約400万円)以上にもなる。しかし、いずれにせよ患者は自身の疾患について情報を得る必要があり、同時にあふれる情報に圧倒されることのないよう注意することも必要であると、同氏は述べている。
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