若い女性に急増している子宮頸(けい)がんのワクチンが国内で初めて解禁され、年内にも接種可能になる。がん化の原因となるウイルスの感染を防ぐ「切り札」として導入されるワクチンについてまとめてみた。(鎌田倫子)
子宮頸がんは、主に性交渉によってヒトパピローマウイルス(HPV)に感染することで発症。いったん感染しても多くの場合、自らの免疫力で排除できるが、何らかの原因で長期間持続したときにがん化する可能性が高くなる。国内では年間1万人以上が新たに発症し、3500人が死亡していると推計されている。特に若い女性に増えており、国立がんセンターがん対策情報センターによると、2002年の新規患者数は20~30代で推計2100人。10年間で倍近くになった。
3回接種 厚生労働省が10月に国内販売を承認したのは、グラクソ・スミスクライン社の予防ワクチン「サーバリックス」。海外約100カ国で既に承認されており、日本人の子宮頸がんの原因の約6割を占める「16型」と「18型」の2種類のHPVに対する感染予防が期待される。
サーバリックスは3回の接種が必要で、2回目以降は、1回目の接種を基準にして1カ月後と6カ月後に注射する。また、海外の臨床試験によると、予防効果は少なくとも6・4年間持続することが確認されており、このデータから推測すると、効果は約20年間続くともされる。
なお、子宮頸がんの予防ワクチンをめぐってはほかに、万有製薬が米国製の予防ワクチンの国内臨床試験に取り組んでいる。
課題も山積 大きな期待が寄せられるワクチンだが、課題も横たわる。
ワクチンの接種の効果が最も高いとみられるのが、性交渉を経験する以前の女児。厚労省は優先接種の対象を示していないが、日本小児科学会と日本産婦人科学会などは合同で11~14歳の女児を接種対象として推奨する見解を発表している。既にワクチンを導入済みの多くの国々でも10代前半が優先接種の対象となっており、例えばカナダでは9~13歳、オーストラリアで12~13歳、スウェーデンでは13~16歳。
また、子宮頸がんの治療に当たるのは、主に総合病院の婦人科だが、ワクチンの普及・啓発には、10代が普段受診する小児科や内科との連携も不可欠。兵庫医科大学病院(西宮市)産科婦人科の鍔本(つばもと)浩志医師は「保護者の理解を得るためにも、地域の病院や診療所と協力したい」と話している。
全額自己負担 さらに、予防を目的にしているため保険外診療となり、全額自己負担で費用がかさむのも懸念材料だ。海外のサーバリックスの接種費用から、3回接種で3~5万円ほどになるとみられるが、この金額はインフルエンザワクチンなどに比べてかなり高額。このため、日本産婦人科学会などは接種に公的支援を求めている。
海外では公費補助がある国も多いが、厚労省結核感染症課は「承認したばかり。長期的にどの程度の効果があるか定かではなく、まだ検討する段階ではない」。これに対して、鍔本医師は「効果が見込める年齢には最終的に公費負担にするのが望ましい」と話している。
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